小野会長の小論文を更新しました!

2013年06月26日 08:26

日本人はインフレを嫌い、デフレを好む。世界中捜しても、そんな国は日本だけだ。デフレは国の経済を縮小させ国を貧乏にし、国民はどんどん貧乏になる。民主党政権はそれにおかまいなしだったが、安倍政権になってから「輪転機をぐるぐる回しお金を刷る」政策、アベノミクスを始めた。麻生財務大臣も日本の借金はお金を刷って返せばよいと発言した。デフレを脱却し、インフレを目指す政策に転換したことは、大変な進歩だと思う。
 
毎日買い物をしている主婦にとっては、インフレは大敵だし買い物に行って値上がりしていたら頭にくる。一日に何回も憤っているのかもしれない。一方で給料が上がるのは年に一度か二度程度。つまり、一年に2~3000回怒って、1~2回喜ぶ。だからインフレは怒りのほうが喜びより1000倍以上大きいのだろうか。
 
もっと理性的になってみよう。インフレ率と賃金の上昇速度はどちらが大きいのだろう。長期経済統計のデータを引用すると1882年から1939年までに賃金は約8.94倍になっているが、この間物価は3.48倍になった。ということはこの間に2.57倍も物を多く買えるようになったということだ。戦後はどうだろう。1964年から2011年までに賃金は36.7倍になったが、物価は6.03倍になっただけだ。つまり約6倍も多く物を買えるようになった。
 
つまり暮らしが楽になるかどうかは、物価だけを見ていても分からなくて、賃金に比べて物価はどうなのかを考えなければならない。小学校の算数で教えるのが最も難しいのは「比」であって、多くの人は比の意味が十分に理解できず成人になったのではないだろうか。そういう人に限ってインフレは悪、デフレは善と考える。しかし日本以外のすべての国はインフレを受け入れ、どんどん経済を成長させている。なぜ日本だけがそれができないのか。
 
デフレがよいと思っている人に考えて頂きたいのは、1997年から始まったデフレで本当に物が多く買えるようになったのだろうかということだ。1997年から2011年までに平均賃金は0.875倍にまで下がった。一方物価は0.964倍に下がっただけだ。つまり1割近く、購買力が落ちた。これでは、消費は伸びないし、消費が伸びなければ、企業も設備投資ができず、古い効率の悪い機械をゴトゴト動かしてなんとか経営を維持するのがやっとだ。デフレの期間以外では購買力は大幅に伸びていて、生活はどんどん改善している。購買力が伸び、消費が伸びれば、企業も利益が膨らみ最新の設備を導入でき、どんどん生産を拡大するからだ。
 
皆さん!もう一度拡大する経済、つまりインフレを続ける経済を取り戻して国を豊かにしませんか!
 
では、どうすれば諸外国のようにインフレ経済へと移行できるのか。簡単だ。お金を刷って国民に渡せば良い。安倍首相も麻生財務大臣もお金を刷ることには賛成だから心強い。あとは刷ったお金をどうやって国民に渡すのかということだ。どうやら今の政府は、刷ったお金でマネーゲームをやらせたいようだ。株を買わせて、株価をつり上げる方針でしょうか。しかし、この方針には大きな危険が伴う。海外の投資ファンドがそれを利用して株価をつりあげ、一度は16000円近くになった。そこでうまく売り抜けて今は12000円台に落ちた。数十兆円というお金が海外の投資ファンドに持って行かれたのではないか。そんなことをするより、減税をしたり、教育・医療・介護・福祉・新エネルギー開発、新技術開発や研究等、日本人のために使ったほうがよいと思いませんか。
 
具体的には、政府が今以上に国債を発行して日本人のために使う。日銀がお金を刷ってその国債を買えばよいだけ。このような政策は「日銀が財政をファイナンス」するとして禁じ手だとされている。でもこれは通貨発行権の行使なのだ。財政ファイナンスを禁止するということは通貨発行権を放棄せよということであって、独立国に認められた最も重要な権利を放棄せよということだ。通貨発行権を放棄したら、日本人は通貨を発行できず、他国の通貨を使うしかないし、なぜ諸外国は通貨発行権を持っていて、日本はそれを持てないのか。あるいは通貨発行権は一度しか使えないというのであれば、683年に日本最初の通貨である富本銭を発行して以来、一切通貨は発行できないことになる。それではとても足りない。経済の拡大に応じて必要なだけ通貨発行権を行使してよいはずだ。デフレの現在は国民に渡っているお金が足りないということだから刷ったお金を国民に渡せば良い。
 
通貨を発行すればインフレになると言う人がいる。デフレを脱却するということはインフレにするということだ。日本以外すべての国で受け入れられているインフレを禁止しろという馬鹿はいないだろう。でもデフレ脱却はしてもよいがインフレはダメだというのだろうか。政府がインフレ率2%を目指すと言っていて、圧倒的支持を受けているときにそれはダメだとは誰も言えないはずだ。であれば、せめて2%のインフレ率実現まででも、通貨発行をやろう、財政のファイナンスをやろうと国民は合意すべきだ。そのためには次のことが絶対必要条件だ。
 
消費税増税をやめること
国債を更に増発し、財政を拡大すること
国債発行を財源に成長戦略を根本的に見直すこと

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