2013年07月02日 23:46
「日本はどうしてこんなに借金が増えてしまったの」と時々質問を受ける。これは本当の意味での借金ではない。麻生さんも「お金を刷って返せばいい」と言ったように、何にも気にすることはない借金だ。経済を拡大するには通貨増発が必要で、お金を刷って返すことは通貨増発をして経済を拡大するということだけだ。刷らなくても、100分の1のデノミをすれば借金は一夜にして100分の1に減らせる。いや、借金のGDP比が問題だと言う人がいるだろう。GDP比を減らしたいなら、積極財政に限る。実際積極財政でインフレになっている国はすべて日本より借金のGDP比はずっと低い。
日本だって戦前は積極財政をやっていた。なにしろ何度も戦争を経験したし、戦争をやるのに歳出削減などと言っていたら必ず負ける。戦前は軍事費のGNP比は通常5%程度だったが、日清戦争の頃は10%、日露戦争の頃は25%以上に跳ね上がった。第一次世界大戦の頃は、日本は大規模な戦闘に巻き込まれなかったから軍事費のGNP比は5%を少し超える程度だったが、戦争特需のおかげで、巨額の利益を得、国内にお金があふれインフレになった。
ところで、現在日本の防衛費は5兆円程度しかなく、GDP比は1%程度だ。ということは戦前は軍事費だけで現在の5~25倍も使っていたことになる。現在の価値でいうと25兆円~130兆円という莫大な軍事費だ。これが通常予算に加算されていたのだから、大変な積極財政だ。当然国債を発行し、巨額の借金をしながら軍備拡張をしていったのだが、長い目で見ると、それは次世代への借金とはなっていない。
確かに、戦争で多額の戦費がかさむと借金のGNP比は一気に増えるのだが、GNPの増加が大きく、しばらくすると借金のGNP比は下がってしまう。しかし、大正バブルが崩壊した後、1920年代に「失われた10年」を経験する。その間政府は国民に痛みに耐えよと言い、緊縮財政を行いデフレが続く。しかし緊縮財政をやっても(あるいはやったから)借金のGDP比はじりじり増えていった。信じられないかもしれないが歴史は緊縮財政で借金のGDP比は上がり、積極財政で借金のGDP比は下がることを証明している。第二次世界大戦の超積極財政の後、戦争が終わるとインフレとなり劇的に借金は減少していった。巨額の借金を緊縮財政・増税で返した例は一度もないし、現在増税や緊縮財政で借金を返せる可能性はゼロであることを理解すべきだ。
日本では倹約は美徳と言われている。しかし、それでは消費が減退し、企業も不活発になってしまい経済が停滞しまう。これがデフレを長引かせているとも言える。諸外国では借金してでも消費したいという傾向が強く、それを制御するのが政府の役割だ。戦前は戦争を繰り返していたため、決して需要不足にはならなかった。戦後の高度成長期にも、企業が次々と新しい設備を導入し生産性を上げ国民の収入を増やし、需要が増えていた。土地神話もあり土地を担保にした融資も拡大が期待できたということもあったのだろう。今は、需要拡大を引き起こすものは何もない。唯一可能性があるとすれば、政府の財政支出の拡大だ。減税でも国民への給付金でもかまわないし、医療・介護・福祉・教育・新エネルギー開発その他研究活動への助成等、カネを使うところは無数にある。戦前、軍事費で使っていた程度の規模(20~30兆円)で歳出拡大を行って需要不足を補うべきだ。需要不足は、経済を衰退させることを忘れてはならない。