小野会長の小論文を更新しました!

2013年07月16日 22:36

歴史認識において日本は悪者にされている。しかし正しい歴史認識とは「戦争に勝者なし」ということだ。第二次世界大戦で勝った国が負けた国より発展しているという事実はない。また他国を侵略して植民地を持ったとし、植民地から富を収奪しようとしても成功しないという歴史的事実がある。植民地政策は割に合わないのだ。日本は日清・日露・第一次世界大戦まで含めれば戦争には通算3勝1敗で高い勝率を誇る。負けた国だけが反省し勝った国に謝るべきだというのが正しい歴史認識というわけでなく、「戦争は割に合わない」と認識するのが真の正しい歴史認識である。
 
そういう意味で歴史認識においては次の理由で、世界は日本を模範とすべきだ。
①戦争放棄の平和憲法を持っている
②軍事費のGDP比は世界最低レベル
③核兵器を持たない
④軍事力によって現状の国境を変えようとしていない
 
この意味で、中国も韓国も全く間違えた歴史認識を持っており、日本をお手本として正しい歴史認識を持つよう努力すべきだし、日本の政治家はそのことを世界に向けて強くアピールすべきだ。
 
ところで戦前の日本は軍事費のGNP比は5%程度であり、戦争の前後では10~25%にもなったが戦後はわずか1%にまで落ち込んでいる。戦前の軍事費は現在の貨幣価値にすれば20~130兆円程度になる。戦前、軍事費が巨大な景気刺激策になっていたのは間違いない。もちろん、戦前並に軍事費を戻せと主張するつもりはない。世界平和が続いているお陰で日本は軍事費に巨費を投じる必要はなくなったのだが、軍事費が激減したお陰もあり需要が落ち込み、企業は何をして良いのか方向性がつかめず不況が続いているという見方もできる。本来国民は平和の配当を受けてもよいはずである。すなわち、かつての軍事費が消えた穴を、国民のためへの財政支出で補うべきである。国民の生活を豊かにしない武器をつくるより、減税を行ったり、医療・福祉・介護・教育・科学技術等に投資したりしたほうがはるかによいではないか。財政赤字を恐れる必要はない。
 
アメリカ人でWarren Moslerというエコノミストがいる。2012年に民主党から大統領選に出馬した経験もあり(獲得投票数は全体の0.98%)、Mosler Automotiveという自動車会社の創業者でもある。またミズーリーカンサス市立大学の完全雇用と物価安定センターの共同創立者の一人でもある。彼の考えも我々の考えに非常に近い。完全雇用のためには、財政赤字を恐れず国はどんどん支出を拡大すればよい。これはModern Monetary Theory (MMT、現代通貨理論)と呼ばれている。この理論の一部を紹介する。
 
マネーとは、国が独占的に国民に提供するものであり、提供されたマネーの一部は税金として国に戻ってくる。その意味で税収と政府の歳出がバランスする必要は全くない。税収と政府の歳出をバランスしなければならないのであれば、マネーを国民に渡すことができないし、そうであれば、税収はゼロで物々交換以外に経済は成り立たない。むしろ、国の経済の発展のためには、ずっと赤字財政を続けたほうがよい。国と民間の取引を垂直取引と呼び、民間の間の取引を水平取引と呼ぶ。国が赤字にあれば、民間は黒字となり、民間の資産が増す。民間の資産を増やすには財政赤字が不可欠だ。
 
国はマネーを創り出し、民間に供給する立場にあるのだから、国の財政収支と家計の収支を比較するのは間違えている。もちろん、行き過ぎたインフレもよくないが、今はそれを考えなければならないときではない。
 
不況が際限なく続く現代では、MMTのような考えを広めることが極めて重要になる。金融緩和に賛成する人は多くても、国の債務が膨大な中で財政拡大に賛成する人は非常に少ない。世界の不況を克服するために同じような考えを持つ人たちが団結し、行動していきたいものだ。
 
ちょっと心配なのは、MMTを主張する人たちが、どこまで赤字財政は許されるのかを議論しないように見える。むしろ、その点をマクロ計量経済学のシミュレーションで議論すれば、理論は一層強化されるのは間違いない。

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