2013年08月27日 23:49
なぜ97年の歴史的大失敗の反省をしないのか
内閣府と財務省は1997年の消費増税を行った後の深刻な不況は増税が主因でなく、アジア通貨危機や金融危機が主因だと分析した資料を8月22日の公明党の会議で配ったそうだ。
1997年、橋本内閣の緊縮財政・消費税増税とアジア通貨危機が重なり、日本はデフレに突入した。万一、消費税増税が来年4月から強行されたとしたら、97年の失敗を繰り返すのは間違いない。あの失敗の反省は無いのだろうか。97年の景気落ち込みの主因はアジア通貨危機であり消費税は関係ない、もしくはほとんど関係ないという説は明らかな矛盾がある。デフレは16年後の今日まで続いているがアジア通貨危機も金融危機もとっくに終わっているからだ。
実際あの通貨危機で経済が大きく落ち込んだアジアの国々は確かに存在する。タイ、韓国、インドネシア、フィリピン、香港、マレーシア等である。しかし、それらすべての国が1999年~2001年までにすべて景気回復に成功しており、日本以外デフレに陥った国はない。それから考えても、97年の日本の景気悪化の主因がアジア通貨危機だという主張には無理がある。金融危機、山一証券や北海道拓殖銀行の破綻も主因の一つといいたいようだが、その影響が今でも続いているとは考えられない。いい加減な資料を内閣府や財務省は配布するのは慎むべきだ。
それとも、諸外国は不況に陥ってもすぐに立ち直れるが、日本だけは一度不況に陥ると立ち直れない体質だと言いたいのか。もしそうなら、今回の消費増税は危険極まりない。景気腰折れなら、日本経済は二度と立ち直れなくなるのだから。
なぜ、日本はデフレ経済なのか。中国等から安い輸入品が大量に入ってくるからだという俗説がある。しかし、それなら日本以外の国も同様にデフレにならねばおかしい。また輸入物価を見ると、決して下がっておらず逆に緩やかに上昇している。輸入物価が最も下がったのは強烈な円高に見舞われた1986,1987年頃だ。しかしこの頃もデフレに陥ったわけではないので、この説は完全に否定される。
ドイツ連銀 8月の月報ではアベノミクスによる景気押し上げ効果は「わらについた火」だそうだ。2013年にGDPを1.25%押し上げるだけで、2014年には消費増税で効果は大幅に縮小、2015年にはマイナスの効果になると主張している。
日経の日本経済モデル(NEEDS)の予測では、実質GDPの伸びは2012年度1.2%、
2013年度2.7%、2014年度0.2%だから同様に来年度は急激な景気の落ち込みを予測する。となると2年間で2%のインフレ目標は夢のまた夢だ。もちろん、消費税でゲタをはかせた「インフレ率」であれば2%のインフレは可能だが、そんなもの意味がない。ゲタの部分を除けば、そんな景気の落ち込みがあれば目標は達成できるわけがない。
それでも2015年度になれば景気が回復するのではないかと期待しているのかもしれない。しかし、それは余りにも楽観的すぎる。97年不況の後デフレはまだ続いている。こんなに長期間デフレが続くことも、増税が国の借金を逆に増やしてしまうということも誰も予想しなかったのだろう。2014年度には97年と同じ事、いやもっと厳しい不況が来る。長年デフレに苦しんだ国民は景気の落ち込みに過剰反応を示すことを忘れてはならない。国民の不安が頂点に達し、消費を抑え、借金を減らそうと一斉に行動を起こし、それが不況を加速させる。是非、思いとどまって欲しい。過ちを繰り返してはならない。今度我々が突入しようとしている大不況は抜け出す方法は無い。もうこれ以上国は借金はできないと信じている限り景気対策はできないのだから。